第20回あきる野市「家庭の日」推進事業 絵画・作文・ポスター入賞作品
[2020年10月27日]
[2020年10月27日]
いつも「かたづけなさい」とお母さんに言われていた、おねえちゃんのへやが、このところきれいになっていた。ゴミぶくろにはもうきないふくがつめこんであった。
「これ、もうつかわないからあげるね。」
あたらしい色えんぴつや、きんのえのぐをぼくにくれた。
よるになって、おねえちゃんがぼくのベットにきた。今までは、ぼくが、ねむれないときは、ぼくが、おねえちゃんのへやへいった。
「もうすぐここを出て一人でくらすからりんちゃんともおわかれなんだ」
と、ふとんの中でおねえちゃんが言った。
「どうしてここをでて、一人ですむの。」
と、ぼくが聞くと、
「おとなになると一人でくらすようになるんだよ。」
と言った。
「さびくしくないの。ぼくは、ずっとここのいえにいるよ。」
「わたしも小さいころは、同じことをお母さんに言ったよ。」
ぼくは、へ~そうなんだとおもった。
お母さんもこのところ、しごとがおわると、かたづけをしている。
「このタオルももたせよう。」
と一人でしゃべっている。おねえちゃんのしごとは、やきんもあったりでいっしょにごはんをたべる日も、なくなっていた。
10月になると、上のおねえちゃんに、赤ちゃんが生まれるので、またかえってくる。
「おねえちゃん、わたしのへやをつかってもらって。」
と、いった。お母さんは、二人のおねえちゃんが本当は仲がよかったんだな~とすこしないていた。
「あの子は、頭がよくいたくなるから、くすりももたせよう。」
と、いろいろふくろにつめこみはじめた。
いよいよひっこしの日、おとうさんは、車をあらってきた。つめるだけのにもつをつめこんだので、
「うしろが見づらいな」
と言いながらうんてんをはじめた。おねえちゃんのすむ新しいいえのばんちをナビにいれた。
「とうとうつくみもひっこしちゃうんだな。」
とだけ言った。ぼくは、つんだあさがおのたねをプレゼントとしてわたした。おねえちゃんはありがとうとわらった。
「ふゆのブーツはどうするの」
と、お母さんが聞くと
「またすぐとりにくるよな」
と、おとうさんがへんじをした。
「そうだね、いつでもくればいいよ。ただ、きんむひょうができたら教えてね。やきんのときメールしちゃわるいから」
と、早口で言った。
おねえちゃんのいえは、おもったよりとおく、新しいカーテンのとりつけを、せの高いおとうさんがひょいひょいした。ぼくはトイレをつかうとき、おねえちゃんのものだと思うとすこしドキドキした。木のにおいがした。
おそくなる前にかえることにした。ドアの前でおねえちゃんが手をふった。ぼくは、ふしぎなきもちでバイバイをした。にもつをおろした車ははやかった。
私は、夏のおぼんが好きです。きれいな灯ろうをかざったり、果物やお花の他にもいろいろなおそなえ物をしたり、おいしい物を食べたり、ちょっとしたお祭りみたいだからです。
まず私は、今年も仏だんのおそうじを手伝いました。やわらかい布で丁ねいにやります。いつもそんなにじっくり見ることのない仏だんの中も、よく見ると小さなお寺の様です。
「今日、おじいちゃん帰って来るのよ。」
おばあちゃんは、ちょっとうれしそう。
ナスとキュウリで牛と馬を作っている時も、
「これじゃあおじいちゃん落ちちゃうかしら。」
なんて言いながらバランスを直したり、
「暗くて道に迷ったらかわいそうだから、いっぱいほおずきのちょうちんかざろうね。」
と、あらなわにたくさんはさんでいました。
そして、仏だんのかざりつけが終わったら、次はおはかのおそうじです。私も手伝いのために出かけました。すると、不思議なことがありました。だれも植えていないのに、おじいちゃんのおはかのたもとに、赤むらさきのケイトウの花がさいていたのです。まるでろうそくがたくさん灯されている様なケイトウは、おじいちゃんが喜びを伝えているみたいで、とてもうれしくなりました。
そうじをしていると、暑くて、暑くて、あせが目にしみました。私は、おじいちゃんも暑いだろうと思って、きれいなタオルを水でぬらしておはかの上にかけてあげました。
「ありがとう。冷たくて気持ちいいなあ。」
おじいちゃんの声が聞こえた気がしました。
「おじいちゃんいっしょに帰ろう。」
私達はそう言って家に帰りました。
家に帰ると、今度はむかえ火です。ほうろくというお皿の上でおがらをたきます。
「おーい。おじいちゃん、ここだよー。」
と、空に手をふって合図しました。そしておがらの火からろうそくに火を灯し、仏だんにおそなえしてお線香をあげました。これでようやく、おじいちゃんとご先ぞ様が帰ってきました。電気を消して、灯ろうの明かりだけにすると、シーンと静まりかえった部屋がいつもとちがって見えました。
テーブルの上には、に物、天ぷら、おはぎ、ちらしずしなど、おいしそうな料理がたくさんならんでいます。そしてそこに、目に見えないけれどおじいちゃんはいるのです。
「おじいちゃん、おかえりなさい。私は四年生になりました。学校とっても楽しいよ。算数が好きなんだ。この間お母さんとパエリア作ったよ。それから、それから……。」
話したいことが次々うかびました。おじいちゃんは、私の心の話をじっと聞いてくれています。話すうちに、だんだんと心が温まって、心がやわらかになっていくのを感じました。
おじいちゃん、来てくれてありがとう。来年も良い報告ができるようにがんばるからね。